2025年4月4日金曜日

安い中古住宅を買ってはいけない? 「適正価格」の見極め方を建築のプロが本音で語ります


 中古住宅を探していると、「ちょっと安いな…」と思う物件に出会うことがありますよね。

築年数は経っているけど、リフォーム済み。見た目はきれい。しかも立地も悪くない。

「これは掘り出し物かも!」――そう思って購入に踏み切った人が、その後、思いもよらない修繕費に悩まされることが少なくありません。

私は建築の現場で、構造修復・耐震補強などに長年携わってきました。
この記事では、**「中古住宅を適正価格で購入するために、本当に見るべきポイント」**を、本音でお伝えします。


中古住宅の価格が「安い」のには理由がある

物件情報を見ると、築年数の古い中古住宅は確かに安いです。
新築では考えられない価格で、土地付き一戸建てが手に入ることもあります。

でも、次のようなことを見逃してはいけません。

  • 土地に再建築不可の制限がある

  • 基礎や地盤に問題がある

  • 耐震基準が旧制度のまま(1981年以前)

  • 増築や改築が繰り返され、構造が不安定になっている

  • シロアリや雨漏りの痕跡がある

表面的なリフォームで隠されている場合もあり、内覧時には気づけないことがほとんどです。


リフォーム済み=安心ではない

「リフォーム済み」という言葉には注意が必要です。

  • フローリングや壁紙を張り替えただけ

  • キッチン・お風呂などの設備を交換しただけ

  • 見える範囲だけを整えた“化粧直し”のようなもの

このようなリフォームで「見た目がきれい」になっていても、構造や基礎、耐震性といった“家の本質部分”には手が入っていないことが多いです。

見た目で判断するのは、非常に危険です。


適正価格って、どうやって見極めるの?

「適正価格」とは単に「相場に対して高い・安い」という意味ではありません。

  • 構造的にしっかりしているか?

  • 大きな修繕費が将来的に必要か?

  • リノベーションがしやすい間取りや構造か?

  • 安く買っても“直すために高くつく”可能性はないか?

これらを総合的に見て、「今の価格は妥当かどうか」を判断する必要があります。

価格は見えても、性能や将来の出費は見えにくい。
だからこそ、プロの視点が重要なのです。


実際にあった失敗事例

築38年の木造住宅を、1,180万円で購入したAさんご夫妻。
「室内はきれいにリフォームされていたし、立地も悪くなかった」という理由で契約を決めました。

ですが、その後…

  • 床下の湿気が原因で土台が腐食

  • 耐震診断で「危険」と判定され補強工事が必要に

  • 雨漏りが原因で断熱材が劣化

  • 全体の傾きが発覚し、レベル補正工事に300万円超

結果的に、追加の工事費用だけで約500万円を超える出費に。

「こんなにかかるなら、最初にもっと高い家を買っておけばよかった」と後悔されたそうです。


掘り出し物の中古住宅は“ほとんど存在しない”

これは、少し厳しい言い方になりますが、私の経験上「格安で状態も良い中古住宅」は極めて稀です。

価格が安い物件には、必ずと言っていいほど「理由」があります。

  • 土地に問題がある

  • 建物が傾いている

  • 目に見えない構造の劣化がある

  • 周辺環境にマイナス要因がある

このような事実を、チラシや不動産ポータルの写真から見抜くのは難しいです。


中古住宅は「買ってもいいが、見極めが9割」

ここまで読むと、「中古住宅=危険」と感じるかもしれません。
しかし、私は決して「中古住宅はやめた方がいい」とは思いません。

むしろ、

  • 構造がしっかりしている

  • 補修履歴や点検記録が明確

  • 自然素材や良質な木材を使っている

  • 増築・改築が少なくバランスの良い設計

こういった物件は、新築以上に住みやすく、長持ちする家になる可能性を持っています。

要は、「見極め」ができるかどうか。


最後に|“安さ”に飛びつく前に、冷静な目で判断を

中古住宅は、選び方によっては本当に満足のいく買い物になります。
でも、「安かった」「見た目がきれいだった」だけで決めると、後悔につながるリスクが高い。

価格だけを見るのではなく、
「直す手間」「将来かかるお金」「安全性」まで含めたトータルコストで考えること。

それが、適正価格で中古住宅を買うということです。


(この記事は、建築・構造の現場に携わる立場から、中古住宅購入に関する注意点をお伝えする目的で執筆しました。特定のサービス紹介・誘導は行っておりません。)

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