中古住宅を探していると、「ちょっと安いな…」と思う物件に出会うことがありますよね。
築年数は経っているけど、リフォーム済み。見た目はきれい。しかも立地も悪くない。
「これは掘り出し物かも!」――そう思って購入に踏み切った人が、その後、思いもよらない修繕費に悩まされることが少なくありません。
私は建築の現場で、構造修復・耐震補強などに長年携わってきました。
この記事では、**「中古住宅を適正価格で購入するために、本当に見るべきポイント」**を、本音でお伝えします。
中古住宅の価格が「安い」のには理由がある
物件情報を見ると、築年数の古い中古住宅は確かに安いです。
新築では考えられない価格で、土地付き一戸建てが手に入ることもあります。
でも、次のようなことを見逃してはいけません。
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土地に再建築不可の制限がある
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基礎や地盤に問題がある
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耐震基準が旧制度のまま(1981年以前)
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増築や改築が繰り返され、構造が不安定になっている
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シロアリや雨漏りの痕跡がある
表面的なリフォームで隠されている場合もあり、内覧時には気づけないことがほとんどです。
リフォーム済み=安心ではない
「リフォーム済み」という言葉には注意が必要です。
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フローリングや壁紙を張り替えただけ
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キッチン・お風呂などの設備を交換しただけ
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見える範囲だけを整えた“化粧直し”のようなもの
このようなリフォームで「見た目がきれい」になっていても、構造や基礎、耐震性といった“家の本質部分”には手が入っていないことが多いです。
見た目で判断するのは、非常に危険です。
適正価格って、どうやって見極めるの?
「適正価格」とは単に「相場に対して高い・安い」という意味ではありません。
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構造的にしっかりしているか?
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大きな修繕費が将来的に必要か?
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リノベーションがしやすい間取りや構造か?
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安く買っても“直すために高くつく”可能性はないか?
これらを総合的に見て、「今の価格は妥当かどうか」を判断する必要があります。
価格は見えても、性能や将来の出費は見えにくい。
だからこそ、プロの視点が重要なのです。
実際にあった失敗事例
築38年の木造住宅を、1,180万円で購入したAさんご夫妻。
「室内はきれいにリフォームされていたし、立地も悪くなかった」という理由で契約を決めました。
ですが、その後…
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床下の湿気が原因で土台が腐食
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耐震診断で「危険」と判定され補強工事が必要に
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雨漏りが原因で断熱材が劣化
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全体の傾きが発覚し、レベル補正工事に300万円超
結果的に、追加の工事費用だけで約500万円を超える出費に。
「こんなにかかるなら、最初にもっと高い家を買っておけばよかった」と後悔されたそうです。
掘り出し物の中古住宅は“ほとんど存在しない”
これは、少し厳しい言い方になりますが、私の経験上「格安で状態も良い中古住宅」は極めて稀です。
価格が安い物件には、必ずと言っていいほど「理由」があります。
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土地に問題がある
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建物が傾いている
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目に見えない構造の劣化がある
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周辺環境にマイナス要因がある
このような事実を、チラシや不動産ポータルの写真から見抜くのは難しいです。
中古住宅は「買ってもいいが、見極めが9割」
ここまで読むと、「中古住宅=危険」と感じるかもしれません。
しかし、私は決して「中古住宅はやめた方がいい」とは思いません。
むしろ、
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構造がしっかりしている
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補修履歴や点検記録が明確
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自然素材や良質な木材を使っている
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増築・改築が少なくバランスの良い設計
こういった物件は、新築以上に住みやすく、長持ちする家になる可能性を持っています。
要は、「見極め」ができるかどうか。
最後に|“安さ”に飛びつく前に、冷静な目で判断を
中古住宅は、選び方によっては本当に満足のいく買い物になります。
でも、「安かった」「見た目がきれいだった」だけで決めると、後悔につながるリスクが高い。
価格だけを見るのではなく、
「直す手間」「将来かかるお金」「安全性」まで含めたトータルコストで考えること。
それが、適正価格で中古住宅を買うということです。
(この記事は、建築・構造の現場に携わる立場から、中古住宅購入に関する注意点をお伝えする目的で執筆しました。特定のサービス紹介・誘導は行っておりません。)
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