「LDKは20帖くらい欲しいんですよね。やっぱり広くないと」
そんな声を、私はこれまでに数えきれないほど聞いてきました。
大工として現場で手を動かし、建築士として間取りの提案もしている中で、 「広ければ正解」という空気が、今の家づくりには少し根強すぎる気がしているんです。
広さ=快適、とは限らない
たしかに、20帖と聞けば開放感がありそうだし、家族がのびのび暮らせそうなイメージがわきますよね。 でも実際に住んでみて、「あれ?思ってたのと違う…」という声も、これまた多いんです。
ソファやテレビの置き場所が決まらない
エアコンの効きが悪く、夏も冬も快適じゃない
広いはずなのに、どこか“落ち着かない”感じがする
これ、全部「広さだけを追い求めた結果」起こることが多いんですよ。
私自身、最初は「広さこそが豊かさ」だと思っていた時期がありました。 でも現場で何十軒と家を見ていくうちに、**「居心地の良さは面積じゃない」**と気づかされる場面に、何度も出くわしたんです。
壁=悪者ではない。むしろ、居場所をつくるパートナー
最近は「壁をなくして一体感を」っていうプランが人気です。 LDKをワンルーム化することで数字的な広さも出しやすいですし、見た目もスッキリします。
でもね、壁って「ただの仕切り」じゃないんです。
たとえば:
ソファの後ろに腰壁があるだけで、空間に安心感が出る
ダイニングとリビングの間に本棚を置けば、程よく区切られて“居場所”ができる
キッチンとリビングの間に視線を遮るちょっとした壁があるだけで、集中できる・散らかりが気にならない
暮らしてみると、**“なんとなく落ち着く場所”って、だいたい“うまく区切られた場所”**なんですよね。
あるお施主様は「最初は壁をなくして開放的にしたかったけど、暮らしてみたらテレビの音が全体に響きすぎて、壁をつければよかったと後悔しました」とおっしゃっていました。
その声、実は一度や二度じゃないんです。
本当に「広さ=正義」ですか?
“広さ=快適” 本当にそうでしょうか?
私はこれまで、15帖でも18帖でも、「広くはないけど、すごく快適」と言ってくださるお施主様をたくさん見てきました。 逆に、20帖以上あっても、「なんとなく空間がもったいない」と感じてしまうこともある。
結局、家って“面積”ではなく“居心地”で暮らすものなんです。
広く見える工夫も大事ですが、それ以上に「暮らし方に合った空間設計」が何よりも大切なんだと、私は感じています。
ある日、別のお施主様に「この18帖、ちょうどよくて落ち着く」と言われたことがあります。 その方は子育て中のご家庭でしたが、「子どもたちが常に目の届く範囲にいて安心できる」と話してくださって、設計冥利に尽きる言葉でした。
自分たちにとっての「ちょうどいい」を探す家づくりを
「広いほうがいい」に違和感を覚えてもいいんです。 流行りや数字に流されず、 “自分たちの暮らしに合った広さって何だろう?” って、じっくり考えてみてください。
壁があってもいいし、空間を緩やかに分けてもいい。 広すぎなくても、「落ち着ける空間」こそが、いい家の条件なんですから。
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